金緑玉・9話
「これ、染めてるんじゃないのよ。生まれつき、緑なんだって。どうせなら、もっと綺麗に均一な色にして欲しいよね。変じゃない。緑なんて。
ああ、でも、変わってるって自分でも思ってたけど、上手っているのね。金緑玉の髪かぁ。あたしは色が変わったりしないもんなぁ。スカルピアさんって自慢だったんでしょう、その髪が。いいな、すごい、いいなぁ……」
くしゃりと歪んだ泣き笑い。彼女が必死で笑みを維持しているかの様に、レゼッタには見えた。
「人間の世界に出て来るまでのあたしは、最低だったの。でも、逃げ出してきたら、あたしは、自分が出来損ないでも何でもない事に気付いた。あたしの精霊使いとしての能力は仲間を助けられるし、それにあたしって結構可愛いんだって。そんなの、全然知らなかったよ。解んないよねえ、こっちじゃなきゃ。
ねえ、あたしは今、自分で道を選ぶ自由を、満喫してる。すごく幸せだよ。
今日アルトファーゼを見て、あたしは、あたしの亡霊を視たわ。ひとりぼっちで、それに満足しようとしている。孤独の精霊と一緒に微笑み続ける事で、他の感情から逃れようとしている。…あんなにあの子の精霊力は乱れていたけど、今日、傍まで近付いても全然平気だった……だって昔のあたしと同じなんだもの……!
あたしたちにとって機会は無制限、でもあの子にはほとんど無い。それじゃ生きている意味が無いじゃない。死ぬ意味すらも無いんだよ。
もしかしたら、一人で閉じこもっている事はアルトファーゼが自分で選んだ事かも知れないけど、でも、あのままじゃ辛いよ、ちょっと外へ出れば、きっと何か良い事が有るはずだよ。出てきて、それから中と外とどちらが幸せかもう一度見つめ直して選べば良い。とにかくアルトファーゼは一度外に出なくちゃいけないよ。
レゼッタさんが外で待ってるんだから、出てくれば良いのに。あたしみたいに逃げ出すんじゃなくて、アルトファーゼは戻ってくるんだからっ……」
レゼッタの手が自然に伸び、少女の緑の髪を撫でた。彼女はその手を捕まえ、震える両の手で握る。そこに熱い涙が落ちた。
「…あーあ……昔の事なんか、誰にも言った事なかったのにな…。どうして言っちゃったんだろ…レゼッタさんのが、『感染った』んだ…」
腕をゼーヤの頭に廻して、優しく抱き寄せる。昼に、彼女がアルトファーゼにしたのと同じ抱擁をレゼッタはした。
顔を俯かせて、鳴咽を洩らしていたゼーヤが、突然震える声で呟いた。
「ごめん、ごめんねレゼッタさん…あたし今、あの子の為だけじゃなくて、自分の為に、泣いてるかも知れない……ごめんね……っ」
堪えようとする息遣いを聞きながら、無言で、ただ彼女の髪を撫で続ける事で、レゼッタは答えた。